
資産フライトとは富裕層が海外で行う節税方法ですが、近頃の増税が引き金になって自分の資産をできるだけ多く残すために海外に財産を移そうとする富裕層が増えてきています。しかし、国外財産の課税強化の動きも厳しくなってきていることから「資産フライトの罠」に陥って失敗する富裕層の数も多くなってきているとのこと。
今回は、富裕層がどのようにして海外での節税に失敗しているのかをご紹介したいと思います。
相続・贈与の増税と新たな規制
国外財産への課税条件強化
実は、日本人が海外に持っている財産に相続税や贈与税が掛けられるかどうかは、相続および贈与を「する人」と「される人」の居住実態によって決まるのです。
コレが、2013年の3月までであれば・・・相続および贈与を「する人」が日本に住んでいたとしても、「される人」である子供などが外国籍を取って海外に住んでいれば課税はされなかったのです。
ところが課税強化が始まった2013年4月からは、この裏ワザは使えなくなったのです。この期間を挟んで資産フライトを行なっていた富裕層などにとっては衝撃の条件変更だったのではないでしょうか?
国外財産調書制度がスタート
2013年の年末に「国外財産調書」制度がスタートしましたが、この制度は・・・5000万円以上の国外財産を持っている人は国税庁へ報告しなければならないというものなのです。
不動産、貴金属、預金、株式、債権などの資産を報告しなければならないのですが、虚偽の報告をしたり提出しなかったりした場合には「1年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」という厳しい罰則が科せられるのです。
富裕層にしてみれば、国外財産調書を作成するには海外資産の「時価」を調べなければならないこともあって面倒に感じたり、何もしなくても大丈夫だろうと放置していた人も多いようです。
しかし、国税庁は海外資産課税専門チームを作って・・・さらに、世界の国々との情報交換も始めているようなので、いつかはどこかの富裕層が狙い撃ちにされる可能性が高いですね。
5年ルールで資産フライト失敗が多発してる
そもそも、相続および贈与を「する人」である親も、「される人」である子供も日本に住所も国籍もなければ課税はされません。
以前までは、子供が日本に住所も国籍もなくて、親が日本に住所があっても課税はされなかったのです。だからこそ富裕層の子供はこぞって海外に移住したり、妻が海外で出産したりしていたわけですね。子供の教育のためとかテレビで説明していましたが・・・実際は相続税や贈与税の課税逃れのためだったわけですね。
しかし、課税強化が始まってからは・・・課税を逃れるためには、相続および贈与「する人」である親も、「される人」である子供も、海外に5年以上も居住しなければならなくなったのです。
財産を海外へ移すという事と、自分が海外へ移住するということには大きな隔たりがあるのです。課税逃れだけが目的の人のほとんどは5年以上の海外移住に耐えられないということで、挫折して帰国する富裕層が増えているわけですね。
自分と子供だけ海外に移住するというわけにもいきませんので、奥様も一緒に移住する富裕層も多いのですが・・・奥様が5年の海外生活に耐えられない例も多いようです。
せっかく多額の資産を海外に移したとしても・・・失敗して帰国したら、結局は相続税も贈与税も払わなければならないのです。資産フライトに失敗した富裕層の嘆きが聞こえてきそうですね!
富裕層の資産フライトまとめ
そもそも、富裕層の資産フライトが失敗する罠は5年居住ルールだけではないのです。
香港などの怪しい投資商品を購入して・・・「騙された!」「最初の話しと違う!」というトラブルに発展している富裕層も多いのです。
武富士創業者や中央出版会長の巨額資産フライトをキッカケにして海外課税強化が始まったわけですが、今後はさらに強化されていくものと思われますので、「資産フライトの旨味」はどんどんと無くなっていくことでしょう。
海外に移住する有名人などがテレビに登場していますが・・・言葉も文化も宗教も違う海外で長期間生活するのは苦痛なものです。税金逃れだけを目的としている人は失敗して帰国することになるでしょうし、教育などで家族全員が海外移住の意味を共有している人は成功することになるでしょう。
超のつくような富裕層は別ですが、プチ富裕層の人達が気軽に資産フライトできる時代は終焉を迎えたと考えて良いのではないでしょうか?