
家庭のゴミは分別してゴミ捨て場に出すのが一般的なルールですが、そのルールを守らない人が大勢いるのが問題となっています。分別しない不届き者が誰なのか分かれば指導することもできるのですが、誰が出したゴミがわからないことには無理なわけですね。
そこで取るべき行動が「ゴミ袋の開封調査」ですが、実はこの行動には「ゴミの所有権」と「ゴミのプライバシー権」という悩ましい問題が付いてきてしまうのです。
横浜市や千葉市や京都市などでもゴミ袋の開封調査が行われようとしているのですが、これらの自治体は分別を徹底することによってゴミの量を減らしたいわけですね。しかしゴミ袋の中には個人情報が含まれていることによって、自治体による開封調査がプライバシー権の侵害に当たる可能性があるのです。
ゴミの所有権とプライバシー権
国家や地方自治体が個人のプライバシー権を侵害することは、実は許されていることなのはご存知だったでしょうか?ただ守られるだけのものではないということなんですが、無制限に認められているというわけでもないのです。
家宅捜索や税務調査はプライバシーを侵してでも事実を知ることを優先させるのですが、手続きが凄く厳格なものになっているのです。家宅捜索の場合は裁判所の令状が必要となりますし、税務調査の調査員の場合は重い罰則が課せられる守秘義務を持たなければなりません。
しかし、ゴミ捨て場に捨てられた家庭ごみの袋を開封して調査することに関しては法律や条例で想定されていない行為になっているのです。しかし、法律や条例に書かれていないからと言ってプライバシー権を侵害しても良いということにはなりませんので・・・実はゴミ袋の開封調査を行なっている自治体は違法行為だとも言えるわけですね。
良くある論調としては、「ゴミ捨て場のゴミは捨てた時点で所有権が放棄されたものと見なされるのだから、誰が開封して見てもプライバシー権の侵害には当たらないでしょう」というものがありますが・・・所有権を放棄することとプライバシー権を放棄することは全く意味が違ってくるのですね。
これを病院のカルテで例えると、患者の個人情報が記載されたカルテの所有権は病院が持っていることになりますが、それを第三者が知ることとなれば患者のプライバシー権が侵害されることになるのです。
つまり、ゴミの場合は持ち主は所有権を放棄しているのですが・・・プライバシー権を捨てたわけではないということになるのです。所有権が誰にあったとしても本人の承諾も無しに開封して情報を読んでしまうとプライバシー権の侵害に当たるわけなのです。
つまり、ゴミ袋を開封してゴミの元の所有者だけを調べるのであれば問題は無いのですが・・・その過程で知り得た個人情報を誰がどのように管理するのかをハッキリ決めておかないといけないというわけですね。
分別していないゴミはどうしたら良い?
分別のルールが守られていないゴミは自治体が回収せずに放置される例が多いのですが、この場合に困るのがマンションの管理組合や市町村の自治会ですよね。
ゴミの持ち主を調べようとするとプライバシー権を侵害することになるので行なってはいけません。しかしそれでは誰のゴミか分からずに再発の防止を行うことができないので問題解決には至りません。
そこで大切になってくるのが、管理組合や自治会によるゴミ袋開封調査の事前の合意を取っておくことです。
マンションに引っ越してきたり、自治会に入った時点でゴミのプライバシー権を放棄することについて確約を取っておくのです。これでトラブルを完璧に防げるわけではないのですが、何の対策も取らないよりは格段にマシというものです。
本来ならば開封調査などやらないで済ませるほうが良いのですが、どうしてもという時に備えておくことはとても大切なことなのです。そういう意味においては、ゴミ袋に名前を書いて出すようにしておくことなどは有効な手段と言えますね。袋に名前が書いてあれば開封しなくても元の持ち主が特定できますからね。さらに、名前を書かずに出されたゴミ袋に関してはプライバシー権を放棄したものとみなす決まりを作っておくのも良いのではないでしょうか?
そして少し予算は必要となりますが・・・最終的には監視カメラなどを設置するのも1つの手ではありますね。
もしあなたがこれからマイホームを手に入れようと思っているのであれば、このようなルールが守られている地域やマンションを選ぶと気持ちよく住めると思いますね。どんなに立派な家に住んだとしても近隣住人のレベルが低ければ嫌な想いをし続けなければならなくなるのですからね!